「Patienceのある人」―アメリカで出会ったお気に入りの褒め言葉。辛抱強く人の話を聞いてその上で助言したり、忙しいときでも惜しみなく自分の時間を人のために割いたりする人のことを褒めて言うもの。
訳したら「我慢強い、辛抱強い人」と言えるかもしれない。でも"He/She is patient to me."などのように、人との関係について使う用法はおそらく日本語ではそれほど一般的でなく、はじめてこのフレーズを知ったときは新鮮に聞こえたものだった。
本日、一つ目の
ローテーションが終了。研究室のメンバーに軽く挨拶をして離れた。わずか三ヶ月弱ではあったけれど、なんだか少々の寂しさがこみあげてしまってそそくさと出ていってしまった。
とりわけ、今回の小プロジェクトを直接みてくれたNTさんのpatienceには本当にお世話になりました。途中から授業の忙しさが加速度を増して行き、さっぱり実験ができなかったが、そんな私にNTさんはよく声をかけてくれた。自分のトランスジェニック系統を惜しげもなく与えてくれ、ゼブラフィッシュ発生学のイロハを教えてくれた。私の日本の出身研究室の先輩という偶然、そして日本語でコミュニケーションを取れたことが、大学院開始のこのバタバタした時期にどれほど救いになったか。
Patienceあるのはまた、ボスBAについても同じ。
この人は本当によく人の話を聞く。コミュニケーション志向のとても高い彼の学問観には賛同するところがとても多かった。
彼は学科内のミーティングやセミナーには必ず出席する。明らかな分野違いの人の話にもくらいついて、よく質問をする。その質問も、講演途中で内容のあいまいなところがあれば、その点を明確にすることを促すものであることが多かった。演者の論理の隙間を埋め、できる限り分かりやすい講演を聴衆としてともに作る姿勢。これはある意味とても勇気のいる質問の仕方で、下手をすれば、「そんなの聞いてりゃ分かることでしょ」との謗りを受けかねない。そして聴衆はそれを恐れてなかなか出てこない質問であるけれど、演者としては一番嬉しい。
このローテーション期間中で一番印象に残っているのは以下の言葉。ある日の研究室内ミーティングの最初、いつものようにくだけた雰囲気の中で連絡事項を話し合っていた中、ふっとボスは表情を引き締めてこう言った。
「昨日、××研(ゼブラフィッシュの他研究室)の○○のPhDディフェンス(博士論文公聴会)があったよね。しかしながら、この研究室から出席していたのは残念ながら、私だけだったんだ。
実験のスケジューリングがきついことはよく分かる。けれど、講演会に参加するということもまた、ゼブラフィッシュコミュニティ、ひいてはScientific Communityに貢献する大切な機会であることをよく理解してほしい。」
アメリカに来てから特に、他の人の研究に敬意を払うこと、興味をもつことの重要性を学んでいる。そこから生まれる大きな可能性―共同研究の推進など、もまた何度か目の当たりにしてきている。ただこのボスほどそれを強調する人もそうはいない気がする。
この研究室、本当にいい雰囲気でよかったな。私の働きぶりをボスや他のメンバーに良くアピールできたとは残念ながらあまり思えないけれど、少なくとも私のこの研究室へ抱いた印象はその一言に尽きるのでした。
さて、次のローテーション先は
Josha Gamse博士の研究室。研究内容は「脊椎動物の脳の左右非対称形成」で、材料は引き続きゼブラフィッシュ。
ボスはおそらくまだ三十代と思しきとても若いPIで、彼の他には大学院生が四人だけのまだ小さな研究室。けれどその分、メンバーのモチベーションが異様に高い。こういう若いPIの研究室を体験してみたかったことでもあるし、ここでもいい時間を過ごせればと思う。
2007/11/20 14:09 | 大学院生活 | コメント(4) | トラックバック(0)
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